- 家族葬で葬儀をすると聞いたけれど、親族でなくても参列していいの?
- 家族葬の案内が来た際、服装やマナーは一般葬と違いはあるのかな?
親しい人や大切な方に不幸があったとき、遺族から葬儀は家族葬で執り行いますと聞く機会があるかもしれません。
鎌倉新書社による調査「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」では、家族葬を実施した世帯は全体の50%となりました。今や家族葬は、一般的に執り行う葬儀の形といえます。しかし経験する機会が少ない葬儀において、どのように参列すればよいか不安に思う人は少なくありません。
この記事では、家族葬の具体的な範囲や内容、マナー、よくある質問について紹介します。遺族の思いを尊重し、心残りがなく最期のお別れができるように、家族葬について、より理解を深めましょう。
家族葬とは
家族葬とは、故人の親族や親しい人だけが集まり、小規模で行われる葬儀のことです。家族葬と呼ばれていても、家族に限定されるわけではなく、明確な範囲はありません。
参列者数も決まった基準はありませんが、数名〜30名で行われるケースが一般的です。少人数ならではのプライベートで静かな雰囲気の中、故人とゆっくりお別れをし、悲しみを分かち合えます。
家族葬の特徴は、礼儀や形式にとらわれず、故人や遺族の希望に合わせて自由に葬儀の内容をアレンジできることです。料理や返礼品を省いたり、香典や供物を辞退したりといった選択もできます。
小規模な葬儀だからこそ、悲しみの中にある遺族の負担を和らげる効果があります。親しい人が集まり思いを共有できることから、遺族の満足度が高まりやすい葬儀のひとつです。
一般葬との違い
一般葬と家族葬は、葬儀の流れは変わりませんが、規模や参列者、費用の面で異なります。
会社や近所の人に知らせたり、新聞に故人の名前を載せたりする一般葬は、参列者が増えるため、規模が大きくなります。一方で家族葬は、親族や親しい友人など限られた人のみになるため、訃報の連絡と案内が来ない人は参列しません。
一般葬に比べて人数が少ないことから、料理や返礼品の費用を抑えられ、経済的負担を和らげやすくなります。故人や遺族の意向に沿った形式を選びやすく、思い出のコーナーや音楽をかけるなど、自由度が高いのも特徴のひとつです。
親族や親しい人のみのため、気心が知れた人同士で故人を偲ぶ、アットホームな葬儀といえます。
家族葬にかかる費用
家族葬の費用は、葬儀会社のプランによって異なります。ただし一般葬と比べると、費用を抑えられる可能性が高いです。一般葬との違いは、下の表のとおりです。
葬儀の種類 | 総額費用(平均) | 回答最多価格帯 |
家族葬 | 105.7万円 | 60万円以上~80万円未満 |
一般葬 | 161.3万円 | 120万円以上~140万円未満 |
多くの葬儀会社では、基本プラン以外にもさまざまなオプションを用意しており、プランによっては追加料金が発生します。お花や返礼品、飲食の提供は、別費用で提供する会社が一般的です。通夜の有無や火葬費用が基本プランに含まれるかは、葬儀会社のプランによって異なるため、見積もりの際に確認しましょう。
参列者の人数が少ない家族葬では、受け取る香典の総額も少なくなる傾向があります。そのため、葬儀の費用自体は抑えられても、一般葬と比べて安くなるとは限りません。事前に信頼できる葬儀社と内容を取り決め、総額の見積もりを取ることが大切です。
家族葬にお呼びする人の範囲
家族葬にお呼びする人は、故人と親しい人であれば、決まりはありません。一般的には故人の家族や親戚、親しい人が中心となります。
10名以下であれば、配偶者、子供、親などの最も近い家族のみと考えられます。30名前後になると、親戚や孫など招待される範囲が広がる傾向です。50名程度の規模となる家族葬では、故人と縁の深い友人も呼べます。
遺言により葬儀の希望がある場合は、故人の意向が尊重されます。家族葬は必ずしも家族のみで行う必要はありませんが、故人を偲び弔う場であることから、参列者は限られる場合が多いでしょう。
参列してもいい家族葬
大切な人が亡くなった際、お葬式に出席したいと考える方は少なくありません。しかし家族葬は家族や親しい人たちが参列するため、遺族から招待がない場合は、遠慮しておくのがよいでしょう。具体的には、以下のケースであれば参列可能です。
- 参列を依頼された
- 葬儀会場や日程が記載されている
- 「参列辞退・不要」の案内がない
参列を依頼された
遺族から参列の依頼や案内状が届いた場合は、原則として出席しましょう。
参列の依頼は、口頭・電話・文書などさまざまな方法で行われます。しかし遺族から連絡がない場合は、家族葬で執り行うと聞いても、自分から申し出るのは控えるほうが無難です。遺族の意向を尊重し、後日改めて故人を偲ぶなど、別の方法を考えましょう。
依頼の案内が来た際は、葬儀の準備に関わるため、参加・不参加に関わらず早めに返事を伝えることが大切です。どうしても参列できない場合は、供花や供物、弔電で気持ちを伝える方法を検討します。
葬儀会場や日程が記載されている
葬儀の日程連絡は、口頭・電話・文章などさまざまな方法で行われますが、一般的なのは文書による案内文です。案内を受け取ったら、以下の内容を確認しましょう。
- 葬儀会場や所在地
- 日程と時間
- 葬儀社や喪主、遺族の連絡先
- 会場へのアクセス方法や駐車場の有無
- 事前に参列意思を確認する方法や期限
- 参列に関する特記事項(服装・持ち物・供物・香典・弔問)
家族葬の場合、一般的な葬儀と同じ形式で行われることも多いですが、オリジナルな形を選ぶ方も増えています。特記事項がある場合は、書かれている内容のとおりに従いましょう。特に記載がなければ、一般葬と同じ形式だと考えておいて問題はありません。
遺族は案内を送った方々に対して、参列していただきたいと考えています。参列する人数や宿泊の有無などは、早めに遺族に伝えると葬儀の準備がスムーズに進みます。時間に遅れる可能性や不安なこと、供物の手配を検討している場合も、早めに相談しましょう。
「参列辞退・不要」の案内がない
葬儀の案内が来た場合は、参列を期待されていると考えられます。しかし次のように「参列不要・辞退」の記載がある場合は、遺族や故人の気持ちを尊重し参加を見送りましょう。
- 参列辞退の例文
- 「故人の遺志により、葬儀への参列およびご厚意につきまして、ご辞退申し上げます」
「葬儀への皆様の参列は、お断りさせていただきます」
参列不要の場合、葬儀の日程や会場の記載はありません。香典や供花、供物をお断りする文も合わせて記載されていることもあります。そういった記載がなく、故人や遺族との関係性が深い場合は、辞退の案内がない限り出席を検討しましょう。
参列してもよいか分からない場合は、事前に遺族とコミュニケーションを取り、参列意思を伝えて承諾を得るのがよいです。他に不明な点や不安なことがある場合も、遺族に直接確認して相談しましょう。
家族葬に参列する際のマナー
家族葬は、故人との最期のお別れとなる大切な場所です。アットホームな雰囲気や自由な形式な葬儀の場合でも、故人を偲び遺族の気持ちに配慮するマナーは大切です。家族葬で気を配りたい3つのマナーを紹介します。
- 香典
- 服装
- 焼香
香典
家族葬の香典は、一般葬と違いはありません。遺族の意向によっては、香典返しの手間を省くために「香典辞退」をするケースもあります。連絡が来た際は気持ちを尊重し、持参は控えましょう。
香典を用意する際は、次の項目を参考にしてください。
- 香典袋にしわの入った古札を用意する
- 手元に新札しかない場合は、真ん中に折り目をつける
- 金額は故人との関係性や、地域の慣習により異なる
- 香典袋には自分の名前を記入する
- 連名の場合、3名までは全員の名前を記入し、4名以上は「一同」と記載する
- 宗教によって、香典袋に書く言葉は異なる
香典に書く言葉は、宗教や宗派によって異なります。仏式は「御霊前」や「御香典」。神道では「御玉串料」「御榊料」、キリスト教は「御花料」「御ミサ料」と記載します。
香典の相場は5千円〜1万円で、1・3・5のつく数字で用意するのが一般的です。しかし故人との関係や自分の年齢、連名で参列する場合などで、金額は異なります。兄弟がいる場合は、あらかじめ金額を合わせておくとよいでしょう。
服装
家族葬の服装に特別なルールはありません。特別な指示がなければ、喪服を基本とし光沢が抑えられた黒で統一します。
男性は黒のダブルかシングルスーツ、黒で無地のネクタイ、白のワイシャツにしましょう。靴下は柄のない黒で、光沢のない黒い靴を履きます。女性は黒のスーツやワンピースに、黒いストッキングと光沢のない黒い靴を組み合わせましょう。ネックレスは一連のパールが基本で、派手なアクセサリーやカラフルで光る髪留めは使用しません。
中高生の場合、日ごろ着用している学校の制服で葬儀に参列しましょう。小学生以下などで制服がない場合は、黒を基本としたモノトーンでそろえます。平服でお越しくださいと連絡があれば、喪服以外の服を検討してもよいです。服装は黒やダークグレーなど、黒に近い色で光沢のないものを選びましょう。
妊婦や高齢の方は、体に無理のない服装を選ぶことも大切です。迷信と言われていますが、妊娠中の方は鏡を持つと災いを防ぐと言われています。どの年齢の方でも、会場や季節を考慮した服装を選び、遺族に敬意を払うことが大切です。
焼香
焼香は故人に対する最期のお別れであり、心を込めて静かに行う大切な儀式です。通常は遺族から先に焼香し、その後に参列者が1人ずつ順番に進んで行います。ここでは、一般的な立礼焼香の流れについて説明します。
- 祭壇に進み、遺族と僧侶に一礼する
- 焼香台の前に進み、遺影に向かって手を合わせ一礼する
- 親指・人差し指・中指を使って抹香をつまみ、額の前に手を持っていく
- そのまま手を下げて、抹香を香炉の中に落とす
- 宗派の作法に従って1〜3回繰り返す
- 遺影に向かって合掌し、一歩下がって一礼する
- 遺族と参列者に一礼して席に戻る
立礼の他にある形としては、焼香を参列者に回す「回し焼香」や、椅子がない場合に座った状態で行う「座礼焼香」です。抹香をつまむ回数は、真言宗は3回ですが浄土真宗は1回など宗派によって異なります。額の前に、手を持っていかない宗派もあります。
あまり経験のない焼香の作法を、不安に思う方は多いでしょう。たいてい焼香の仕方は、葬儀会社から案内されるのが一般的なので安心してください。焼香で大切なのは、故人を思い心を込めて行うことです。
家族葬のよくある質問
家族葬のよくある質問に回答します。不安を感じることなく故人をしのぶためにも、疑問を解消していきましょう。
家族葬に子供を連れて行ってもいい?
家族葬に子供を連れて行くことは可能です。しかし子供の年齢や、故人の意向を考慮する必要があります。
家族葬の連絡が来た際は、子供を連れていく考えを事前に遺族に相談しましょう。そもそも親族でなければ、できるだけ連れて行かないほうがよいです。
子供の服装は、葬儀に合わせ黒を基本としたモノトーンにします。制服がある場合は、学生服で参列するのが一般的です。飽きやすい子供のために、本やおもちゃを持つのもおすすめです。音が出るようなおもちゃは控えましょう。
小さい子供が、葬儀について理解できないのは仕方のないことです。さらに普段と違う雰囲気に慣れず、ぐずってしまうこともあります。一度外で気分転換させるなど、パートナーや家族と協力し合い、心残りのないように故人とお別れをしましょう。
家族葬における香典辞退の意味とは?
家族葬での香典辞退は、故人や遺族が香典を受け取らない意思を示すものです。訃報の連絡の案内状に記載されることが多く、口頭で伝えられることもあります。
香典辞退は、参列者に経済的負担をかけたくない、香典返しの手間をなくしたい、小さな式にしたいという遺族の思いからです。香典辞退に加えて、供花や供物についても辞退を求めるケースもあります。
香典辞退のみの場合は、供花や供物、弔電を送るなどの方法で、哀悼の意を示すことも可能です。方法を検討したら、まず遺族に相談しましょう。突然の悲しみに襲われた遺族が、葬儀を手配する負担は大きいです。何もしない選択をとるのも、ときによっては大切です。
まとめ
家族葬は故人や遺族の希望により、近しい人のみで行われる小規模な葬儀です。突然の悲しみに直面した遺族の負担を軽減するため、費用や参列者は限定的になります。
家族葬の案内が来たなら、遺族は参列を希望している可能性が高いです。できるだけ早めに返事をし、出席の可否を検討しましょう。参列する場合は、香典や服装、焼香のマナーを守ります。
遺族の気持ちに配慮し、大切な故人の思い出を分かち合いながら、心残りのないよう最期のお別れをしましょう。